先週は、月曜日は大阪の初市、水曜日から土曜日の午前中まで東京に滞在、大阪に戻ったその足で大阪古書組合の新年互礼会に参加と、実に慌ただしい一週間でした。

今回の東京滞在では市場での仕入れのほか、美術館をまわったり友人や同業者の方と飲んだりと、久しぶりに羽根を伸ばすことができました。ちなみにまわった展覧会は、写真美術館の「生誕100年 ユージン・スミス写真展」「無垢と経験の写真 日本の新進作家 vol. 14」「TOP Collection アジェのインスピレーション」、国立科学博物館の「南方熊楠-100年早かった智の人-」、庭園美術館の「装飾は流転する」、21_21 DESIGN SIGHTの「野生展:飼いならされない感覚と思考」、銀座メゾンエルメスの中谷芙二子+宇吉郎展「グリーンランド」 、横浜美術館の「石内 都 肌理と写真」「全部みせます!シュールな作品 シュルレアリスムの美術と写真」。こうやって書き出してみると、我ながらよくこれだけまわったなと少し呆れます。どの展覧会もとても興味深く観覧しましたが、あえてひとつ選ぶとすると写真美術館のアジェ展でしょうか。アジェのヴィンテージプリントを間近で見れたのが良かったです。

市場は東京資料会、明治古典会、南部入札会に参加。実力不足のためなかなか思うような落札は叶いませんでしたが、それでも数点面白いものを仕入れることができました。こちらは近々ニュースレターにてご紹介できるかと思います。

さて今回の東京滞在は、写真家の渡邊耕一さんから資生堂ギャラリーで開催されている展覧会「Moving Plants」のレセプションにお誘いいただいたのがきっかけでした。渡邊さんは10年以上に渡り世界各地をまわって「イタドリ」という植物を撮影してこられた写真家で、3月2日まで資生堂ギャラリーにて展覧会が開催されています。実は渡邊さんのお住いが事務所の近所で、今回レセプションにお誘いいただいたのでした。

展示でまず眼に入るのは、イタドリが生えている世界各地の風景。本当に何の変哲もない街中や郊外の風景で、ただ作品だけをみると「世界の色んな所にイタドリが生えているんだなあ」というぐらいにしか思わない。しかし何故、世界各地にハートの形をした葉っぱの植物が生えているかが非常に重要なのです。

実はイタドリは東アジア原産の植物で、元々欧米では植生していませんでした。一体誰がヨーロッパに持ち込んだのか?それはあのシーボルトでした。16世紀以降、大航海時代のヨーロッパ各国は世界各地の植民地に植物園を築きます。植物園では現地の植物を採取・育成し、産業や観賞用に本国に送る役割を果たしていました。日本では唯一の欧米通商国であったオランダが出島に植物園を築き、その造成に関わったのがシーボルトでした。数百種の植物とともにイタドリも有用植物としてその中で育てられます。シーボルトが帰国後日本の植物を輸入し栽培を行う協会を設立すると、植物園を通じてイタドリも日本から運び出され、園芸用植物として取引され欧米諸国へ拡散していったのでした。

それから200年以上経った現在、イタドリはどうなったのか。かつては園芸用植物として育てられたイタドリは様々な要因により雑草として爆発的に繁殖。「世界の侵略的外来種ワースト100」のひとつに数えられる生態系の侵略者として、駆除の対象となります。特にイギリスでの被害が大きく、イタドリの根や茎が道路やコンクリートを突き破る被害などが続出し、その処理にかかる費用はなんと年間1億5000万ポンド。イタドリを含む土壌の運搬が法律で禁止されるまでに至りました。200年の時を経て、シーボルトによってもたらされ園芸用として珍重されたイタドリは、自然を侵略しながら繁殖する忌み嫌われる存在へと変わり果ててしまいました。

このような背景を知った上で渡邊さんが撮影した世界各地の風景を眺めると、最初とは違った見え方になるのではないでしょうか。それらはイタドリによって侵略された土地であり、人のいない風景はSF的ディストピアのようにも見えます。また、一つの植物の移動によって環境が書き換えられてしまったという事象は、グローバリゼーションが進む現代に大きな示唆を与えるのではないでしょうか。このイタドリが辿った歴史を写真で表現するのが渡邊耕一展「Moving Plants」。ご興味を持たれた方は、ぜひご覧いただければと思います。

渡邊 耕一展「Moving Plants」

会期: 2018年1月13日(土)~3月25日(日)
会場: 資生堂ギャラリー
〒104-0061
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
Tel:03-3572-3901 Fax:03-3572-3951
平日 11:00~19:00 日曜・祝日 11:00~18:00
毎週月曜休(月曜日が祝日にあたる場合も休館)
入場無料